2011年5月14日から2012年3月14日までの305日間、20回の講座と2回のオーケストラ合同練習。なかなかの長丁場でしたが、大変ご苦労様でした。見事最終日までたどりつけましたこと、共に喜びあいたいと思います。
ベートーベンの交響曲はしばしば建築物にたとえられます。
例えば、運命の第1楽章などは「・ダダダダーン」という単純なパーツのみをを組み上げて作った、レンガ作りの建物のようです。
皆さんが、ほぼ1年をかけて取り組まれたベートーベンの第九。
オーケストラは、主体構造部にあたります。オーケストラには種々の楽器があり、それぞれ、基礎であったり、柱であったり、壁であったりするわけです。
そして、合唱。これは屋根に当たります。それも瓦葺きの重厚な屋根。合唱団の皆さん一人ひとりが瓦の1枚1枚だと思ってください。その瓦は、1枚1枚色が違います。
適当に並べてしまうと、実に見栄えの悪い屋根になってしまいますが、色の並びを注意深く考えて、並べると見事なデザインの屋根になります。
また、1枚も欠くことはできません。1枚でも抜け落ちたり、はがれたりするとそこから雨漏りすることになり、建物の価値は一気に下がってしまいます。
誰も、雨漏りのする家など欲しくありませんからね。
そして、ソリスト。これは、建物を印象づけたり、特徴づける装飾、欄間などの造作、あるいは床の間に飾られた壷や掛け軸であるかもしれないし、壁にかけらられた絵画と考えてもよいでしょう。
今回私たちは、この建物をプレハブ方式で作りました。
夜久野工場では、5月14日から、まず部材を磨き徐々に美しい屋根に仕上げていきました。秋に入ると装飾品の製造を。また、年末ごろから綾部工場で主体構造部の製作にあたったわけです。
MAF管弦楽団は1月の終わりから、夜久野で基礎工事に入り続いて主体構造部を作り上げ2月26日に棟上げ。
3月4日には夜久野で300日かけて作った屋根が乗り、装飾品も入り・・・3月11日に完成を見たわけです。
そして、3月18日。竣工式を迎えます。みんなで完成を喜び合いたいと思いますが、その前に・・・
建物というのは竣工式を行うことを目的に建てるものではありません。竣工式とはあくまでも完成を喜び合う場であって、この建物はそのあとどのように使われるかが大事なのだと思います。
この、講座を通じ、合唱団の皆さんの中には、歌うことの楽しさ、大勢で声を合わすことの喜びや感動、第九を歌うことの充実感、オーケストラと共に歌うことの楽しさ、あるいは、これまで知らなかった人との数々の出会い・・・など、数多くの事を得られた思います。
それを、竣工式を最後におしまいってするのではなく、どうぞ今後につなげてほしいと思うのです。
それは、第九とか合唱という形にとらわれることなく、ここで生まれた新しいコミュニティがどんどん育っていけばいいと思うのです。
それを実現するための、第九の家であってほしい。
そうすることによって、今回建てた第九の家はますます輝きを増し、価値も上がります。
上を見れば、まだまだ素晴らしい建物はたくさん存在します。今回の第九の家は一流の建築家が建てたものと比べればずいぶん見劣りするかもしれませんが、日曜大工でやったにしては上出来だと思ってください。
また、腕を磨いていただいて、さらに素晴らしい2棟目が建ちますことを念じております。
1年間おつきあいありがとうございました。